2025年に注目されたIT分野【2026年度版】

はじめに

2025年のITトレンドは「生成AIの実務実装が当たり前になったこと」と「セキュリティ・規制・省電力といった“現実側の制約”が一気に強まったこと」が大きな特徴です。
本記事では、2025年に特に注目されたIT分野を、実務での判断に使える観点(何が起きたか/なぜ注目か/活用例/押さえるポイント)で整理します。


1. 生成AIの次段階:AIエージェント(自律型AI)

トレンド

  • チャットで答えるだけでなく、目的達成まで「計画→実行→報告」まで動くAIが注目
  • 業務フロー(問い合わせ対応、見積作成、調査、社内申請、運用監視)への組み込みが進行

なぜ注目されたか

  • “人の作業”を置き換えるのではなく、“人の意思決定と実行”を支援し、スピードを上げられる
  • 単発の自動化ではなく「業務全体の再設計」につながる

活用例

  • 営業:提案書の下書き→競合比較→想定QA→次アクション作成
  • 制作:要件整理→サイトマップ案→ページ構成案→チェックリスト生成
  • 運用:レポート自動生成→改善案→A/B案の作成

押さえるポイント

  • エージェントに「できること/やってはいけないこと(権限)」を最初に定義
  • ログ・承認フロー・停止条件(暴走防止)を設計

2. AIガバナンスと規制対応(“使うためのルール整備”)

トレンド

  • AI利用が広がるほど、社内規程・審査・監査・説明責任が重要に
  • EUのAI規制(AI Act)など、事業側が無視できない枠組みが進行

なぜ注目されたか

  • 誤情報・著作権・個人情報・差別など、リスクが“運用課題”として顕在化
  • 「便利だから使う」から「守りながら成果を出す」へシフト

活用例

  • 生成AI利用ポリシー(入力禁止情報、出力の検証責任、引用ルール)策定
  • 社内ナレッジの取り扱い(学習させない、参照だけにする等)の整理

押さえるポイント

  • 利用範囲を“部署・用途”で分ける(全社一律は事故りやすい)
  • 監査できる形で運用(ログ、承認、ガイドライン、教育)

3. セキュリティの現実:ランサムウェアと侵入経路の多様化

トレンド

  • ランサムウェアが依然として最大級の脅威
  • WebアプリやID(認証情報)を起点とした侵入が目立つ

なぜ注目されたか

  • 攻撃が高度化し、復旧コスト・事業停止リスクが経営課題化
  • 取引先・サプライチェーン経由のリスクも増大

活用例

  • 多要素認証、権限最小化、端末管理、EDR、バックアップの見直し
  • 重要システムの分離、復旧手順(BCP)整備、訓練

押さえるポイント

  • 「侵入されない前提」より「侵入を前提に早期検知・封じ込め・復旧」へ
  • WebアプリとID管理(パスワード運用含む)の再点検

4. ゼロトラストの定着(境界防御から“検証前提”へ)

トレンド

  • 社内/社外の境界が崩れたことで、アクセスごとに検証する考え方が主流へ
  • クラウド利用・リモート運用・委託先連携が増え、従来型の防御が限界に

活用例

  • 認証の強化(MFA)、端末状態のチェック、条件付きアクセス
  • 管理者権限の分離、特権IDの監視、ログ基盤の整備

押さえるポイント

  • いきなり“全部ゼロトラスト”ではなく、重要領域から段階導入
  • 運用負荷が増えるため、標準化(テンプレ化)と自動化が重要

5. ポスト量子暗号(PQC)と暗号移行の準備

トレンド

  • 量子計算機の進展を見据えた暗号移行(“今から準備”が現実的に)
  • 将来解読されうるデータ(機密情報、契約、個人情報)の保護が焦点

活用例

  • 暗号利用の棚卸し(どこで何の暗号を使っているか)
  • 証明書・VPN・署名の移行計画策定、ベンダー対応状況の確認

押さえるポイント

  • 技術そのものより「移行計画・資産把握・更新運用」が勝負
  • “暗号アジリティ(差し替え可能性)”を設計に組み込む

6. 省電力・高効率コンピューティング(AI時代の必須テーマ)

トレンド

  • AI利用増により、電力・計算資源・コストが経営課題化
  • 高効率化(省電力チップ、最適化、運用改善)が注目

活用例

  • 推論の最適化(モデル軽量化、キャッシュ、バッチ処理)
  • 運用監視で無駄なリソースを削減(クラウド費用最適化)

押さえるポイント

  • AI導入は「精度」だけでなく「コスト/電力/速度」をセットで評価

7. 空間コンピューティング(Spatial)とデジタルツイン

トレンド

  • 現実空間とデジタル情報を重ねる活用(教育、設計、保守、接客)
  • 製造・建設・設備保守で、デジタルツイン活用が再注目

活用例

  • 現場作業の手順提示、遠隔支援、設備点検の効率化
  • BIM/CADやIoTデータと連携した可視化・予兆保全

押さえるポイント

  • “かっこよさ”より、現場の業務短縮・ミス削減に直結する設計が重要

8. ロボティクスと自動化(現場DXの本命)

トレンド

  • 人手不足を背景に、物流・製造・受付・点検などで自動化ニーズが継続
  • AIと組み合わせて「状況対応できる自動化」へ発展

活用例

  • 倉庫の搬送最適化、検品、巡回点検の省人化
  • コールセンターの一次対応自動化と品質管理

押さえるポイント

  • 導入前にKPI(削減時間、ミス率、稼働率)を決め、効果検証の設計をする

まとめ

2025年は、生成AIが“便利ツール”から“業務の中核”へ進んだ一方で、規制・セキュリティ・省電力といった現実要件が強まりました。
成果を出す鍵は、技術選定ではなく「運用設計(権限・ルール・ログ・改善)」にあります。まずは自社の優先課題(集客、採用、現場効率化、情報管理)から逆算し、段階導入で確実に進めるのが最短ルートです。